CADの歴史
多くのメーカや建設業界では、図面作成においてCADの操作が必須となりつつあります。
しかし、CADが機械製品や建築図の製図作業に普及したのはここ十数年間のことであり、それまではドラフタと呼ばれる製図台を用いた手書き作業が主体でした。
製図現場でCADが急速に普及した背景として、ここ数十年で爆発的に向上したコンピュータの性能向上が大きく関わっていると容易に考えられます。
そこで、今回はCADと製図の歴史について、コンピュータ業界との関連性を中心にお話ししてゆこうと思います。
CADの変遷
まず、CADの原点と言われているのが1963年にマサセッチュー工科大学のサザーランド氏が発表したSKETCHPADというシステムです。これは、世界初の対話型コンピュータシステムで、当時のコンピュータは演算能力が遅く、かなり大型で高価な製品でしたが、その後の高性能コンピュータの開発を推し進めるきっかけとなったといわれています。
それまでは、製図作業はドラフタという製図台に紙を拡げて手書きで図面を描いていました。そのため、おのずと作業効率は作図する人物の技量に大きく左右されていました。
しかし、SKETCPADの登場以降、コンピュータのハードウェア高性能化が進み、1973年にソリッドモデルの表現方法が発表されてからは作図業務のコンピュータ化が図られるようになりました。
その後、1980年代に入ると3次元オブジェクトの線形状のみで表現するワイヤーフレームモデルの開発が進み、ソリッドモデルとサーフェースモデルとの分類もなされるようになり、3次元加工データ作成用のサーフェースとして3D CADが普及してゆきました。1990年代にはwindowsN Tシリーズが開発され、ハードウェアの性能が向上してゆき、それに伴い製図現場では2次元CADに替わって3次元CADが広まってゆきました。
そして、1990年代後半になるとCPUの高性能化が一気に進み、コンピュータの演算処理速度が飛躍的に向上しました。そこで、3次元CADの中でもモデルの重量や体積を計算することができるソリッド系ソフトが製品の試作で使われるようになりました。
現在では、2次元CADは機械用・建築用など特定の業務向けに特化したソフトである「専門CAD」と使用環境を特定業種に絞っていない「一般CAD」に分類できます。そして、3次元CADは自動車や航空機などの設計現場で主に使われている「ハイエンドCAD」、多くの機械・家電メーカなど多くの企業で導入されている「ミッドレンジクラスCAD」、基礎研究や個人設計者などで導入されている「ローエンドCAD」に大別されます。
3次元CADの普及による現場管理の変化
3次元CADが普及するにつれて、CADの根幹である製図作業だけでなくデータ管理や開発期間の短縮など製品開発の効率化に向けた様々な取り組みが開発現場でなされています。一例として、PLMを導入することにより、製品開発におけるデータの管理や普及、流通を的確にコントロールできるようになり、製品開発の過程ほぼ全てをバーチャルプロダクトとしてデジタル管理することが可能となっています。
このような環境変化により、製造業では最終目標であるモノづくりの過程において、ほとんどの工程でデータ作りとなっています。そのデータ作りを支えるツールである3次元CADは、ほとんどのソフトウェアを海外のメーカが担っています。