CADの正式名称とは?
CADは、製造業の設計や生産管理の分野で幅広く利用されている技術ですが、CADが果たす役割については大まかにしか知られていない現場も多いかと思います。そこで、今回はCADの正式な名称や、CADが産業界に果たしてきた役割について説明してゆきます。
目次
CADとは何の略称か
CADとは、Computer Aided Design の略称であり、自動車などの工業製品や建築物などの設計・製図をコンピュータ上で行うためのソフトウェア(情報システム) のことを指します。CADが登場するまでは、部品図や建築図といった製品を製作するのに必要な設計図の作成は全て人の手で行っていました。その中で、CADの出現によってそれまで人の手に頼り切りだった製図作業をコンピュータが行うようになり、手作業の時と比べて作業時間の短縮や製図作業におけるヒューマンエラーを大幅に減らすことに成功しました。
設計対象や目的により、次のように分類することがあります。
・CADD(Computer Aided Design and drafting):コンピュータ支援(対象:設計製図)
・CAID(Computer Aided Industrial Design):コンピュータ支援(対象:工業デザイン)
・CAAD(Computer Aided Architectural Design):コンピュータ支援(対象:建築設計)
ちなみに、日本ではCADについてJIS B 3401 で「製品の形状、その他属性データから構成されるモデルをコンピュータ内部に作成し、解析・処理することで進める設計」と定義されています。
CADの登場による現場の変化
前章で述べた通り、CADそのものは、それまで人が手作業で行っていた設計・製図作業をコンピュータを用いて行うシステムで、最初は単純作業の繰り返しをコンピュータが行うことで、作業効率を改善できるようになり、手入力での入力ミスなどを防ぐこともできるようになりました。その後、コンピュータ技術が進歩するのに伴って、設計工程ではより精度が高い解析を図る方向でCADの改良が進み、その流れに沿って、設計段階で得られたデータを生産工程で有効に活用させるようなシステムの改良につながりました。
現在、CADは機械産業や建設業をはじめ、様々な産業(業界) で各分野の特性に合わせた専門ソフトが開発され、各産業の発展に貢献してきました。
一例として、電気機器の分野ではプリント基板の設計において、搭載する電子部品の効率的な配置パターンの設計をスピーディーに行うことができるようになりました。また、半導体産業では集積回路のフォトマスクを設計できるようになりました。
用途別CADソフトとフォーマット
専門CADソフトとして、主に次の種類がリリースされています。
・機械用 ・建築用 ・建築設備用 ・土木用 ・電気用 (回路用、基板用が存在)
・半導体分野用 ・基礎研究用 ・アパレル用
これらのうち、基礎研究用では熱流体の解析用CADや電磁波の解析用CADなど、シミュレーション技術と組み合わせて、流体や波の流れを解析する試みがなされています。
また、ほとんどの分野で2次元CADと3次元CADが開発されており、図面作成の目的や用途、相手から求められているレベルなどによって、両者を使い分けていることが大半です。
これらのCADソフトで使用されているファイルの主要なフォーマットは次の通りです。
・DXF (ほとんどのファイルと互換性があるため、他業者とのデータ交換で用いられることが多いフォーマットです)
・DWG(オートデスク社が開発したフォーマット形式で、CAD業界で最も有名で設計現場に導入されているフォーマットです)
・DWF ・IGES ・JAMA ・SIMA ・IFC